対人トラウマのお話

2026.10.13

トラウマは心だけでなく身体の病気に影響が

 生きものは全て、「いかに生きのびるか」 を追求して進化してきました。そして人間も生きものです。人類の歴史も、今の国際政治も、私たちの日常生活も、人々の営みの根底には、「いかに生きのびるか」という渇望があります。裏を返せばそこには「傷つき=トラウマ」という強烈なインパクト(衝撃)が潜んでいます。「傷つき=トラウマ」を避けるための命がけのカラクリ(対処)があり、そのトラウマへの対処が破綻すると健康の破綻にも繋がります。

 心だけでなく身体の病気の要因としてストレスがよく知られていますが、これからの時代はストレスよりもトラウマこそが病気の要因だと言われるようになっていくでしょう。

 自殺やこころの病気だけでなく、糖尿病、肥満、心筋梗塞、がん、認知症などの多くの身体の病気はとくに幼少期のトラウマが重要な要因だとわかってきたからです。大人時代のトラウマも同様に健康を害します。

トラウマインフォームドケア「TIC」をご存じですか?

 ストレスとは、何かからの攻撃に対して抗っている状況ですが、抗える余地がまだあります。

それに対しトラウマとは、抗うことができない、選択肢が奪われた、そのために傷ついている状況。

その時の生きものの反応は、①逃げる、②戦って追い払う、③仮死状態(あきらめて運に任せる)のいずれかです。それに失敗した時生きものは死に、滅んでしまいます。

 人間も生き物ですが、人間社会ではそのような生きものの反応を許してくれません。選択肢を奪われる状況=トラウマは人間の上下関係で起きやすいものです。例えば、親から虐待さても抗えない子供たちとか、職場で部下が「それはできません」と勇気をだして言ったら上司に叱責されたなど、様々です。

 野生動物なら逃げ出す選択肢を求めますが、人間社会では許されない、そのため普通に傷つくのです。このことが近代までずっと問題にされなかったのは、そもそも世の中が荒々しく人々は短命であったからです。しかし時代は変わり、この百年で寿命が倍に伸びて死ななくなった生きもの(現代人)は、トラウマによる病気を抱えこみながら生き延びる時代を迎えました。そのため医療費も増え続け、税金も増えて、これまた抗えませんね。

 そこでト、ラウマのことをよく知り対応しようという社会活動(トラウマインフォームドケア:TIC)が2018年のアメリカ連邦政府の承認に始まり、今や全世界に広がっています。

トラウマに満ちた現代社会への対策の活動はもう始まっています。詳しくは、QRコードからご参照下さい。

■この記事を書いた先生

日本原病院 心療内科医 

コメント:トラウマインフォームドケアなんて理想でしょ?と、思ってしまいますよね。世界は矛盾に満ちており、そう、簡単ではありません。だからこそせめて傷ついた人々のオアシス、回復のための場を提供したいと私たちは考えます。

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